プロローグ
目の前に、扉。
この向こう側にどんな風景が広がっているのか、誰も知らない。
知ることができるのは、この扉を開ける勇気を持っている人だけ。
断崖絶壁、それとも紺碧の海?はたまた緑燃える草原?空想は果てしなく頭の中を駆け巡る。そしてそれはいつまでも想像の域を越えない。
螺旋階段が続く。上を見る。天をも突き破るように伸びている階段。下を見る。地底へも導いてくれる程の階段。
どちらへ行こうか?
エレベーターはありませんか?エスカレーターでも構いませんけど。
文明の利器を探すところなんざ、やっぱりあたしも現代人。疲れることはしたくないのね、きっと。らくに、らくぅに目的達成しようとしてる。でも。よく考えたら、あたしの目的って何?
上でもしたでもいいんだけれど、そこへ行ってどうしようっていうの?今目の前にあるような扉はきっと上にも下にも、それこそ無数にあるに違いないのに。この扉と他の扉、どちらが今のあたしに最高のシチュエイションを提供してくれるのか、全然判らないのに。
蓋を開けてみなけりゃ、いや、扉を開けてみなけりゃ話は始まんない。
――ということで、とりあえずこの扉を開けてみよう。あたしの好きな海の風景だと気分は最高!なんだけど。 |