昔、占いや心理テストなどが中心の「elfin」という月刊誌がありました。
たまたま読者からの「不思議なストーリー(フィクション・ノンフィクション問わず)」を募集していたので、
りあも投稿したのですが、運良く(?)採用され、雑誌に掲載されました。
でも、内容はかなりカットされ、言葉じりなども変えられていたため、
オリジナルとは違ったものになってしまってました。
私の文章がつたないせいだったのかもしれませんが、ちょっとショックを受けました。
ということで、ここでは雑誌に掲載されたものではなく、オリジナルを紹介することにします(^o^)。
りあが「渡辺瑞穂」のペンネームで24歳の時に書いたストーリーです。
(雑誌にはなぜか「渡辺瑞穂」ではなく「りあの旧姓+瑞穂」で掲載されましたが)
今ではもう、この手のストーリーは書けませんねぇ・・・。あまりにも恥ずかしすぎる(^^ゞ。
ちなみに、このストーリーはフィクションです。

ロマンティック・トリップ
暁と別れてから半年が過ぎた。別れた理由?はっきりしたものは何もないけど、お互いの感覚がずれ始めたっていうのが最大の理由かしら。何をやってもタイミングが悪くて、空回りばかりしてた。やることなすことすべてが裏目に出てしまったり。二人の歯車がうまくかみあってなかったのね、きっと。だからと言って嫌いになったわけじゃない。そこが一番やっかいなところ。別れを切り出したのは彼の方だったので、私としては未練たらたらものなのだ。もっとも、彼の方は私のことなんてすっかり忘れて、新しい恋を探しているかもしれないけれど。

私は相変わらず眠れぬ夜を過ごしている。頭の中に暁の顔ばかり浮かんできてしまうのだ。そうして、二人で一緒にドライブした海岸沿いの風景や、他愛のないおしゃべりやジョーク、彼が好きだった曲のフレーズやなんかが頭の中をぐるぐる回り始めるのである。そうなってくるととても眠れたものじゃない。気付いた時には空が白み始めてた、なんてこともよくあった。赤い目をしたままで出勤した日は、手が十本あっても数えきれない。

暁の電話番号も覚えてる。住所だってちゃんと知ってる。「会いたい」って言えば、もしかしたら会ってくれるかもしれない。だけど私にはどうしてもそれができなかった。これ以上、二人の間をこわしたくないという気持ちからだが・・・。考えてみたら、これ以上面倒臭い関係になるわけはないのである。私にしてみれば、失うものは何もないのだから恐れる必要はないのだ。でも私は恐れている。暁のはっきりとした拒絶を・・・。

とある満月の夜だった。私はまたも眠りの精とは縁がなく、ベッドの中でまんじりともせず、時間が過ぎていくのを待っていた。
満月の夜は人間の心が不安定になりやすいと言うけれど、その所為もあるのかしら、今日はやけに神経が高ぶっているみたい・・・。
これでは明日がまたきつい。少しでもリラックスできるように、と私は友人の麻美から譲り受けた環境音楽のテープを取り出した。そしてそれをウォークマンにセットすると、枕元に置いて聴き始めた。ゆっくりと目を閉じる。いつものごとく、私の頭の中はさながらメリーゴーランドの様に回り始めた。

ところが今日はどうしたことか、だんだん気分が晴れてくる。テープのおかげかなぁ。体が軽くなってきたみたい。
そこで私は自分を見下ろしている自分に気付いた。えっ!?私がベッドに寝てる!?じゃあ、は・・・?夢見てるのかしら?だけど意識ははっきりしてるわ。
血のめぐりの悪い私は、その現象が幽体離脱(アストラル・トリップ)なのだと気付くのにしばらくかかった。自分を外側から眺めてるなんて、なんとも奇妙な感じだ。でも不思議と恐怖感は、ない。
私はしばらくの間、そのまま天井近くでふわふわと浮いたまま、を眺めていた。
(そう言えば、幽体離脱(アストラル・トリップ)して好きな所へ行けるって話、聴いたことあるなぁ・・・)
何の気なしにそんなことを思い出した私。「好きな所」!?好きな所って一ヵ所しかない。行きたい所って一ヵ所しかない。こんなこと滅多にないわ。よし、行くだけ行ってみよう・・・。暁の所へ。

お散歩するにはとても素敵な夜だわ、なんてのんきなことを考えながら、しばらく自分の家の屋根の上で星空を眺めたあと、暁の家へと向かった。
暁の部屋は二階にあった。私はそうっと窓ガラスに触れてみた。ガラスからの抵抗を少し感じたけれど、難なく部屋の中へ入ることができた。
ステレオとビデオ、ファミコンまである。そう言えば私、部屋の中に入るのって初めてなんだわ。そういう付き合いになる前に別れてしまったんだもの。ふとステレオの方に目を向けると、私がダビングしてあげたテープが置いてあった。今でも聴いているのかしら。別れた時点で、もう捨てられちゃってるんじゃないかって思ってたのに。そう思いながらも私は少し嬉しかった。

ベッドの方を見ると、枕を抱えてぐっすりおやすみ中の暁がいた。寝顔見るのなんて、これもまた初めて。まさか寝顔見られてるなんて、本人は夢にも思ってないでしょうねぇ。
私はベッドの傍へ降りた。暁の顔を見るのは本当に久しぶりのことである。話はできなくてもこうしていられれば、それでいい。今までの苦しい思いを考えれば天国と地獄だもの。でもできるものなら、暁のあのきれいな瞳を見たいんだけどね。かと言って起こすわけにもいかないし。人間って、ホントに欲深なんだわ、と変なところで悟る私であった。
それにしてもまぁ、無邪気な顔して寝てらっしゃること。思わず母親みたいな気持ちになった。
さて、そろそろ戻らなくちゃ、と思った途端に私はベッドの中にいた。天井に浮いていた時の様な感覚はなく、いつもの状態に戻っている。私、ホントに幽体離脱(アストラル・トリップ)したのね・・・。そうしてそのまま寝入ってしまった。

あくる晩のこと。暁会いたさに、私はまた環境音楽のテープを聴きながらベッドに入った。昨日と同じように体から抜け出ると、彼の部屋へ向かった。
そうっと暁の傍へ近づくと、今日の彼は何やら顔を歪めている。どうしたんだろう。嫌な夢でも見てるのかしら。それとも仕事のことで悩んでることがあるのかしら。何もしてあげられない自分がはがゆい。
せめて手でも握ってあげられたら・・・と思うのだが、いかんせん、突き抜けてしまうので両手で包み込むようにしてみた。しばらくすると暁の顔がふっとゆるみ、口元にかすかな微笑みが浮かんだ。
ああ、良かった。私の気持ちが少しでも通じてくれたのなら、もっと嬉しいんだけどね。なぁんて言うのは贅沢かしら・・・?そうして私はちょっぴり幸せな気持ちで自分の部屋へ戻った。

それからの私は不眠症(!?)に悩まされることがなくなった。気持ちが安定してきたからだろう。暁の顔を見ることが何よりの薬になったようだ。その暁の所へは以前は二日に一度は行っていたが、最近は週に一度くらいになった。いつでも行ける、という自信(!?)がついた所為かもしれない。とは言え、仕事でミスをしてしまったり、落ち込んだりした時は必ず暁の顔を見に行った。

初めて幽体離脱(アストラル・トリップ)をした日から三ヶ月ほど経っただろうか。私はすっかりもとの明るさを取り戻していた。ただ、やっぱり暁への想いは断ち切れずにいたけれど。

あれは新月の夜。珍しく残業をした日だった。帰って来るなり、電話が鳴った。
「はい、はい、ちょっと待って!」
靴を脱ぐのももどかしく私は電話の傍へ駆け寄った。
「はい、渡辺です」
「あ・・・。瑞穂?俺・・・暁だけど」
一瞬、耳を疑った。暁、ですって!?別れてこのかた、さっぱり音沙汰のなかった彼なのに。もっとも、私は二日前に顔見たばかりだけど。
「久しぶりね。元気だった?」
「うん、まあね。そっちこそ元気だった?」
「ありがと。おかげさまで元気よ。最近ちょっと忙しくてバテ気味だけどね」
「そうかあ、俺の方はやっと一段落ついたところだよ。ここ二、三ヶ月が一番忙しかったかな」
そう言えば、眉間にしわ寄せて眠ってた日が結構あったみたい、と私は思った。やっぱりあれは仕事の所為だったのね。
「ところで、どうかしたの?電話してくるなんて」
「え?ああ・・・」
「電話してくれるなんて思ってもみなかったから、ちょっと驚いちゃった」
「あ、ごめん」
「どうして謝るの?電話もらって嬉しいって私、言ってるのよ」「
以前の私からはとても考えられないほどの会話である。今まではこんな素直な言葉、恥ずかしくて口に出せやしなかったのに。だけど今は、心から素直な気持ちで話ができている。
「・・・なんだか声が聴きたくなってね」
「ありがと。光栄だわ」
私はくすっと笑った。少しの間心地良い沈黙が流れ、そして暁の声が聞こえた。
「最近俺、よく夢を見るようになったんだ。しかも、いつも同じような夢」
何の話かと思えば、夢!?一体どうしたんだろ、この人。だけど別れた相手に電話してくるくらいなんだから、よっぽどのことなのかも。しばらく話し相手になってあげようかな。暁の声を聴くのも久しぶりだしね。相変わらず低めのいい声・・・。
「ふうん・・・。それで、どんな夢見るの?恐い夢?」
「絶対に笑うなよ」
「笑わないわよ。だから教えて」
「・・・お前の夢」

私、どう反応していいのかわからなくなって黙りこんでしまった。ありがとう、って言っていいものなのだろうか、この場合。暁は言葉を続ける。
「夢の中で、お前、いつも俺を見守っててくれてるんだ。別に何も言葉はかわさないんだけど、静かに俺を見て微笑んでて・・・。おかしな奴だと思うだろうけど、本当なんだ」
「・・・」
暁の潜在意識は敏感に私の存在を感じ取っていたのかもしれない。それが夢となって現れたのだろう。
「初めのうちはそれほど気にしてなかったんだ。でもあんまり同じ夢ばっかり見るもんだから、本当は俺、お前のことが必要だって思ってるんじゃないかって気がして・・・」
一瞬のためらい。それはきっと暁にとってほんの少し勇気を出すための時間だったのかもしれない。あとになって私はそう思った。そしてそのあとに続いた彼の言葉は・・・。
「もう一度、やり直してみないか?」
嗚呼!まさかこんな言葉が聞けるなんて。夢ならどうかさめないで!!って祈った私の気持ち、わかってもらえます?

夢ではなかった証拠に今、私の隣には暁がいる。昼下がりの海辺。暖かな陽射しと、少し湿った風が心地良い。
「ねぇ、暁」
「うん?」
「あなたが私の夢を見ていた時ね・・・」
そこまで言いかけて私は言葉を飲み込んだ。私は本当にあなたの傍にいたのよ、って話したいのをぐっとこらえて。こういうことって、秘密にしておいたほうがきっと素敵なんだよね。
「何だよ?」
「ううん、何でもなあい」
そう言って私は暁の腕にしがみついた。
「途中まで言いかけといて、変な奴だな」
私は悪戯っぽく笑ってみせた。
「あのね、あなたが私の夢を見ていた時、きっと私もあなたの夢、見てたのよ」
暁、照れ臭そうに笑う。やっぱり、本当のこと言わないほうがいいみたい。
ロマンティックは、そのままに!・・・ね。

<Fin>
最後まで読んでいただいて、ありがとう&お疲れさまでした。
今読み返すと、直したい部分がたくさんあって困ります〜(^^ゞ。
でも、あえてオリジナルのまま載せてしまいました。
りあ自身、幽体離脱の経験がないので半分くらいは想像しながら書きました。
(半分は雑誌等で得た知識)
幽体離脱に詳しい方、もし間違ってる部分があったら教えてくださいませ。


戻る     メニューへ